はじめに:レースは「練習の総仕上げ」ではなく「戦略の実践」
ここまで12週間の練習と補給を積み上げてきたあなた。
最後に待ち受けるのは、42.195kmをどう走り切るかという“本番の戦略”です。
フルマラソンは、努力よりも「ペース配分」で結果が決まる競技。
同じ走力でも、前半を無理なく進めたランナーは最後まで脚が残り、
一方で突っ込みすぎたランナーは30km以降で一気に失速します。
この記事では、サブ3.5(=3時間29分以内)を狙うための、
スタート〜ゴールまでのペース配分と、当日の補給・メンタル管理を解説します。
サブ3.5に必要なペースとタイム配分
まず、目標ペースを明確にしましょう。
- 目標タイム:3時間29分
- 平均ペース:4分58秒/km
ただし、全区間を同じペースで走るのは現実的ではありません。
理想はネガティブスプリット(後半がやや速い展開)です。
💡理想的なペース配分(例)
| 区間 | 平均ペース | 通過タイム目安 |
|---|---|---|
| 0〜5km | 5:05〜5:10/km | 25分30秒 |
| 5〜10km | 4:58/km | 50分00秒 |
| 10〜20km | 4:55/km | 1時間39分 |
| 20〜30km | 4:58/km | 2時間28分 |
| 30〜40km | 4:55/km | 3時間17分 |
| ラスト2.195km | 4:50/km前後 | 3時間29分ゴール |
このペース配分のポイントは、「最初の5kmを我慢する」こと。
スタート直後は周りに流されがちですが、少し抑える勇気が後半の快走を生みます。
スタート直後:力をセーブして流れに乗る
スタート直後はアドレナリンが出て、体が軽く感じます。
しかしこの感覚に任せると、知らぬ間にキロ4:40ペースになり、
10km地点で脚が重くなるという典型的な失敗パターンになります。
理想は「キロ5分10秒前後で入る」こと。
周りが抜いていっても焦らず、自分のリズムを保ちましょう。
この“序盤の我慢”ができる人こそ、サブ3.5を安定して達成できます。
また、スタート直後は給水所をスルーしてもOK。
気温が高い場合を除き、最初の5kmは体内にまだ十分な水分があります。
中盤(10〜25km):リズムを保つ「巡航区間」
ここがレースの“心臓部”です。
EペースとLT走を積み上げてきた成果を発揮し、リズムで走ることがポイント。
- 呼吸は「3歩吸って3歩吐く」リズム
- フォームは腕を自然に引き、肩の力を抜く
- ペースはキロ4:55〜4:58/kmをキープ
10km地点で1回目のジェル、20kmで2回目のジェルを摂取します。
吸収を良くするため、ジェルは必ず水と一緒に飲みましょう。
ここで「楽に走れている」と感じられたら、練習の成果が出ている証拠です。
逆に、この区間で苦しい場合は、前半の入りが速すぎた可能性があります。
ペースを落とす勇気も、完走のための戦略です。
30km以降:メンタルと補給が勝負
いよいよ勝負どころの30km地点。
ここで“30kmの壁”を越えるために、補給とメンタルの両方が鍵になります。
✅補給のポイント
- 30kmで3回目のジェル(カフェイン入りがおすすめ)
- 35kmで最後のジェル or 少量のスポーツドリンク
- 塩分タブレットを併用(足つり予防)
ここでエネルギーを入れることで、後半の“集中力切れ”を防げます。
逆に、補給を怠ると体が動かなくなり、気持ちが一気に落ちます。
✅メンタルの保ち方
30km以降は、ほとんどのランナーが辛くなります。
「ここまで来た自分を信じる」ことが最強のエネルギー源です。
おすすめは、「10分ごとに小さな目標を作る」こと。
「次の給水所まで」「次の1km標識まで」と区切ると、精神的な負担が軽くなります。
レース当日の装備チェックリスト
レース当日の朝、バタバタしないために装備を前日夜に確認しましょう。
| カテゴリ | 持ち物 |
|---|---|
| 補給 | ジェル4〜5個、塩タブレット、アミノ酸ドリンク |
| 装備 | GPSウォッチ(Garminなど)、ゼッケン、ウェア、キャップ |
| 天候対策 | 雨具、アームカバー、サングラス |
| アフター | 回復ドリンク、タオル、着替え |
特にGarminなどのGPSウォッチは、ペース維持と心拍管理に必須です。
「1kmごとのオートラップ設定」をオンにしておくと、ペースの乱れを即チェックできます。
ゴール直前:最後の2kmをどう走るか
35kmを超えたあたりからは、気力勝負の世界です。
ここまで粘れたランナーだけが「もう一段ギアを上げる」ことができます。
ペースは4分50秒/km前後に上がってもOK。
呼吸が荒くても、ここから先は気持ちで走り切る時間帯です。
「今までの練習が背中を押してくれる」——その感覚を信じましょう。
ゴール後のリカバリーも戦略の一部
完走後は、まず水分と糖分をすぐに補給しましょう。
疲労した筋肉は、30分以内に栄養を入れることで回復が早まります。
- アミノバイタルプロ(粉末タイプ)
- バナナやゼリー飲料
- ストレッチ・フォームローラーでの筋膜リリース
サブ3.5を達成したら、体を労いながらリカバリーを意識すること。
次のレースにつなげるためにも、「走ったあとの行動」が大切です。
まとめ:前半を抑え、後半に笑顔で
サブ3.5を達成する最大のコツは、「前半で頑張らない」こと。
序盤を抑え、中盤を一定に、後半を粘る——それが理想の走り方です。
- 最初の5kmは我慢してリズムを作る
- 中盤は淡々とEペースを刻む
- 30kmからは補給とメンタルで粘る
サブ3.5は、一瞬の勝負ではなく、積み上げた努力の結晶です。
練習、補給、そして当日の戦略——すべてが噛み合ったとき、
ゴールラインの向こうで最高の笑顔に出会えるはずです。

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