はじめに:30kmの壁は「エネルギー切れ」が原因
フルマラソンで「30kmから急に足が動かなくなった」「頭がボーッとする」──
そう感じたことがあるランナーは多いはずです。
これは単なる筋力不足ではなく、体内のエネルギーが枯渇する“ガス欠状態”が主な原因です。
特にサブ3.5を狙うペース(1km=4分58秒)では、1時間あたり700〜800kcalを消費します。
一方、体に蓄えられる糖質(グリコーゲン)は2,000kcal程度。
つまり、何もしないと2時間半でエネルギーが底をつき、残り12kmが地獄になります。
この記事では、40〜50代ランナーでも安心して実践できる、「補給で30kmの壁を越える」戦略を紹介します。
マラソンに必要なエネルギーの基本
体のエネルギー源は大きく分けて2種類あります。
- 糖質(グリコーゲン):スピードを出すときの主燃料。枯渇すると失速。
- 脂質(脂肪):ゆっくり走るときの燃料。糖質が減ると燃焼しにくい。
サブ3.5ペースでは脂質代謝も使いますが、糖質の消費量が多くなります。
そのため、レース中に定期的にエネルギーを補給して糖質を切らさないことが、完走と失速の分かれ目です。
レース当日の補給タイミング(基本パターン)
フルマラソンで理想的な補給は「スタート前+5kmごと」。
特に25km以降は、吸収スピードを意識して取り方を工夫します。
| 距離 | タイミング | 内容 |
|---|---|---|
| スタート30分前 | 走り出す前に | エネルギージェル1個+水100ml |
| 10km | 体が温まった頃 | ジェル1個(糖質+アミノ酸系) |
| 20km | 中盤の集中力維持 | ジェル1個+スポドリ100ml |
| 25〜28km | 30kmの壁対策 | カフェイン入りジェル1個 |
| 35km | 粘りの区間 | BCAAまたはハニー系ジェル1個 |
スタート前のジェルを忘れる人が多いですが、これは非常に重要です。
走り始めから血糖値を安定させ、最初の10kmを“省エネ”で走る助けになります。
ジェル選びのコツ:味と成分のバランスが大事
「どのジェルを選べばいいの?」という質問をよく受けます。
ポイントは3つです。
- 吸収速度:マルトデキストリンやグルコース系が速効性◎
- 成分のバランス:糖質だけでなくナトリウム・BCAAを含むものを
- 味と食感:喉が乾きやすいタイプは避ける
40代以降のランナーは胃腸の負担も考慮すべきです。
練習中に一度試して「飲みやすい」「お腹が痛くならない」ジェルを見つけておきましょう。
おすすめは以下の組み合わせです。
- 🟢 マグオンジェル(Mag-on):吸収が早く、ナトリウム補給もできる
- ⚡ アミノサウルスジェル:カフェイン入りで後半の集中力維持に◎
- 🍯 ハニースティンガー:天然ハチミツベースで胃に優しい
水分補給と塩分の関係
サブ3.5を狙うスピードだと、1時間で約700〜1,000mlの水分を失います。
水だけを飲むと体内の塩分濃度が下がり、痙攣や倦怠感の原因になります。
理想的な水分補給は、ジェル+100mlの水をセットにすること。
エイドで取るときも、一口ずつこまめに摂るのがポイントです。
おすすめドリンク:
- ポカリスエット(ナトリウムと糖質のバランス◎)
- アクエリアス(軽い口当たりで飲みやすい)
- OS-1(暑い日の塩分補給に)
練習中の補給練習も忘れずに
本番でいきなり補給するのはリスクです。
30km走や2時間走で、必ず本番と同じジェル・タイミングを試しましょう。
よくある失敗例:
- ・ジェルを飲むタイミングが遅すぎて吸収が間に合わない
- ・一度にまとめて飲みすぎて胃が重くなる
- ・練習では水だけで走り、本番で初めてジェルを使用
補給も「練習の一部」として慣れておくことが、サブ3.5達成の鍵になります。
補給戦略を支える3つの心得
- 「エネルギーは前借りする」意識で早めに取る
疲れてから飲むのでは遅い。10kmごとに“先回り補給”を。 - 胃腸に優しいタイプを選ぶ
糖濃度が高いジェルを連続摂取すると胃が荒れやすい。練習で見極めよう。 - レース当日はポーチ管理を徹底
ジェルをウェストポーチやベルトに固定。取り出しやすさが集中力を左右します。
補給の落とし穴:「足がつる」「頭が回らない」原因とは
実はエネルギー以外にも、電解質とカフェインの管理がパフォーマンスに大きく影響します。
・ナトリウム不足 → 足がつる、集中力低下
・カフェイン過剰 → 胃のムカつき、脱水
・糖質不足 → 頭がぼんやりしてペース維持が困難
これを防ぐためには、カフェイン入りジェルは1〜2個までに抑え、
塩分タブレットを1時間に1回摂取するのがおすすめです。
実践例:別府大分毎日マラソンでの補給パターン
筆者が別府大分毎日マラソンで自己ベスト(3時間24分50秒)を出した時の補給例です。
- スタート30分前:マグオン+水
- 10km:アミノサウルス(BCAA入り)
- 20km:ハニースティンガー+アクエリアス
- 28km:カフェイン入りジェル
- 35km:BCAA+塩分タブレット
このパターンで後半もペースを維持でき、ラスト5kmを上げることができました。
重要なのは「タイミングの一貫性」。体に“習慣”として覚えさせましょう。
まとめ:補給は「脚のトレーニング」と同じくらい大事
30kmの壁は、走力ではなく準備と計画で乗り越えられます。
練習中に補給リズムを体に染み込ませ、レース当日には無意識で取れるようにしておきましょう。
「走る力」と「補う力」。
この2つをバランス良く磨くことが、サブ3.5への最短ルートです。
次の記事では、実際にレース当日にどうペースを組み立てるか——
「サブ3.5レース戦略とペース配分」について詳しく解説します。

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