坂がなくても鍛えられる“強い脚”の作り方
1. 坂道走とは?ランナーの脚を“再構築”する練習
〜筋力・心肺・メンタルを同時に磨く、最強の練習〜
フラットなコースでの走りに慣れると、 レース後半の登りや向かい風で一気に脚が止まることがあります。 そんな「弱点」を克服するのが、坂道走です。
上り坂を使って脚の筋力+心肺+フォームの安定を同時に鍛える。 これが坂道走の最大の目的です。
上りでは太もも前面(大腿四頭筋)、お尻(大臀筋)、ふくらはぎ(ヒラメ筋)が総動員され、 平地では得られない“脚の押し出し力”を鍛えられます。
2. Jack Daniels が語る「坂を走る意味」
Jack Daniels はこう言っています:
“Hills are speed work in disguise.”
(坂道走は、スピード練習の仮面をかぶった筋力トレーニングである。)
つまり、坂道走は筋トレとスピード練習を兼ね備えた一石二鳥のトレーニング。 速く走るだけが目的ではなく、より効率的に走るフォームを作る練習でもあります。
3. 坂道走の主な効果
- ① 脚の筋力アップ:坂を押し出す動作でハムストリングスと大臀筋が強化される。
- ② 心肺機能の向上:短時間でも強い刺激を得られる。
- ③ フォーム安定性の改善:自然と姿勢が立ち、骨盤を前傾させやすくなる。
- ④ メンタル強化:息が上がる中で前に進む経験がレースの“粘り”に直結。
4. 坂道走の種類と実践メニュー
① 坂道ダッシュ(短距離)
- 距離:100〜150m
- 傾斜:5〜8%
- 本数:6〜10本(下りは歩いて回復)
- 目的:瞬発力・脚筋力アップ
② ロングヒル(持続走タイプ)
- 距離:400〜800m
- 傾斜:3〜6%
- 本数:4〜6本
- 目的:心肺+スタミナ強化
③ アップダウン走(実戦型)
- コース:起伏のある周回(例:1〜2km)
- ペース:Eペース+20秒/km程度
- 目的:ペース変化への適応・登坂耐性づくり
5. 坂がない人のための代替トレーニング
都市部や平地ランナーでも安心してください。 坂がなくても、坂道走と同等の刺激を与える方法があります。
① トレッドミル(傾斜走)
- 傾斜設定:3〜6%
- 距離:1km × 3セット(間に200mジョグ)
- ポイント:ピッチを一定にして“押し出し”を意識
② 段差トレーニング(階段 or 段差ステップ)
- 15〜20段をダッシュ → 歩いて降りる ×10本
- 着地衝撃が強いので前傾姿勢を保つ
③ ブリッジ&スクワット(室内補強)
- ヒップリフト(30回 × 3セット)
- ブルガリアンスクワット(片足10回 × 3セット)
- レッグレイズ(20回 × 3セット)
これらを週1で取り入れるだけでも、 坂道走の代わりとして十分効果があります。
6. 実践例:私の「坂なし週」の練習メニュー
ある週、出張で平地しか走れなかった時の実例です。
| 曜日 | メニュー | 内容 |
|---|---|---|
| 火 | Eペース走 | 10km(5:55/km) |
| 木 | トレッドミル傾斜走 | 3km(傾斜5%・5:40/km) |
| 土 | ブルガリアンスクワット | 自重 ×3セット |
| 日 | ロング走 | 25km(6:00/km) |
この週は坂を走っていませんが、 翌週のLT走で呼吸の余裕が明らかに増えたのを感じました。 傾斜走でも十分に「坂の刺激」は再現できます。
7. 坂道走のコツと注意点
- ① 腕をしっかり振る(上半身の推進力を使う)
- ② 上りで姿勢を立てすぎない(軽く前傾)
- ③ 下りはスピードを抑えて着地衝撃を逃がす
- ④ 翌日はジョグまたは完全休養(疲労残り注意)
8. まとめ:坂がなくても、強くなれる
坂道走は、単に「坂を走る練習」ではありません。 それは、脚と心を同時に鍛える練習です。
坂がなくても、工夫次第で同じ刺激を与えられる。 大切なのは“負荷をかける工夫”と“継続”。
Jack Danielsはこう言っています。
“Training isn’t about perfect conditions. It’s about adapting to what you have.”
(理想的な環境よりも、今ある環境に順応することこそが本当のトレーニングだ。)
あなたの街に坂がなくても、走るたびに自分を超えられる。 それがサブ3.5ランナーの強さです。
▶️ 次の記事:【補強トレーニング(筋トレ編)】へ続く(準備中)

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