1. Eペース走とは?「ゆっくり走る」ことの本当の意味

まだ空が明るくなる前、河川敷に立つ。 息を白くしながらGPSウォッチのスタートボタンを押す。 その瞬間、今日も自分との静かな戦いが始まる──。

多くのランナーが「もっと速く走らなきゃ」と思い込んでいます。 でも、サブ3.5を達成したいなら、速く走るよりも“ゆっくり走る”ことが大切。 それがEペース走(Easy Run)です。

この「E」とは “Easy(楽に)” の頭文字。 ペースで言えば、サブ3.5を狙うランナーなら5分50〜6分10秒/kmが目安です。 「速さ」ではなく「余裕」を感じながら、呼吸を整えて走る──それが本当のEペースです。


Jack Daniels の言葉が示す真実

アメリカの名コーチ Jack Daniels はこう言いました。

“Easy pace should feel comfortable enough that you could talk in complete sentences.”

(Eペースは、会話を続けられるくらいの余裕がある強度で走るべきだ)

彼はまた、Eペースを「VO₂maxの約60〜75%」と定義し、 “Eペースこそ、最も多くの距離を走るべきペースだ”とも述べています。

つまり──速さを捨てる勇気が、本当の強さをつくるということです。


2. なぜEペース走がサブ3.5の鍵になるのか?

① 「脚を作る」=距離を走るための基礎練習

Eペース走は、フルマラソンの後半でも足が動く“持久脚”を作ります。 乳酸をほとんど溜めずに走り続けられるため、週2〜3回の実施でも疲労が残りにくいのが特徴。

② 故障予防と継続力

40代・50代になると、疲労や故障が一気に積み上がります。 Eペース走を中心に据えると、関節や筋肉への負担が減り、 “走り続けられる身体”が自然と作られます。

③ 脂肪燃焼とエネルギー効率の改善

ゆっくり長く走ることで、脂肪を燃やして走る力(脂質代謝能力)が向上します。 これができると、30km以降の「ガス欠」を防げるようになります。

Danielsも次のように語ります。

“Easy running develops your aerobic system more than any other intensity.”

(Eペース走こそが、有酸素能力を最も発達させる練習だ)


3. 実践メニュー:Eペース走を習慣にする

① 目安ペースと距離(サブ3.5ランナーの場合)

サブ3.5を狙う場合のEペースは次のとおりです。

  • 5分50〜6分10秒/km × 60〜90分
  • 月間200〜250kmのうち、半分以上をEペースで構成

この“地味な時間”こそが、あなたの走力を支える柱になります。

② 週間スケジュール例

曜日メニュー内容
Eペース走12km(5:55/km)
LT走6km(4:35/km)+アップ・ダウンジョグ
ロング走25〜30km(6:00/km)
回復ジョグ or 休養5kmジョグ or 完全休養

③ よくある失敗と解決策

  • 速くなりすぎる:「Eペース=楽」ではなく「退屈」なくらいがちょうど良い。
  • 疲労をためすぎる:週末のロング走前日は必ず休む。
  • 飽きる:音楽やポッドキャストを活用して“心を飽きさせない”。

4. 実体験:Eペース走で見えた景色

私がEペース走を始めたのは、別府大分マラソンの数ヶ月前。 それまで“LT走こそ最強”と信じ、毎週ハードに走っていました。 結果、疲労骨折手前の痛みと、月間走行距離の伸び悩み。

ある日、Garminのペースアラートを「6:00/km」に設定し、 「今日はゆっくりでいい」と自分に言い聞かせて走りました。 最初は物足りなかったけれど、3週目くらいから体が軽くなり、 不思議とスピード練習の日の走りが“キレる”ようになったんです。

30km走でも後半に足が動く── あの感覚を得た瞬間、Eペースの本当の価値を知りました。


5. 補給・装備のポイント

  • 練習前:バナナ1本+アミノバイタルGOLD
  • 練習後:DNSプロテイン+ストレッチ10分
  • シューズ:クッション重視(例:ゲルカヤノ/ノヴァブラスト)

特にEペース走は衝撃の回数が多いので、 「厚底=甘え」ではなく「継続するための防具」と考えましょう。


6. まとめ:Eペース走は“静かに効く”

Eペース走は、地味で、退屈で、時に眠くなるような練習です。 けれど、その「静かな時間」の積み重ねが、 レースの35km以降であなたの背中を押してくれます。

Jack Danielsはこう言いました。

“The best runners are not the most talented, but the most consistent.”

(最も速いランナーは、才能ある者ではなく、最も継続した者だ)

今日のジョグが明日の力になる。 Eペース走を、あなたの生活の一部にしてみてください。

▶️ 次の記事:【LT走の効果と実践法】へ続く(準備中)

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